去る8月20日(土)に埼玉支部第1回代議員会・講演会を新宿キャンパスにて開催いたしました。会場参加22名、Zoom参加3名に加え、支部間交流として北東北支部吉田支部長にもZoom参加をいただきました。
【代議員会】
岡田支部長の挨拶から始まり、参加者全員の自己紹介の後、次第に沿って以下の議題の説明があり、承認、確認されました。
1.2022年度新代議員及び新理事の追認報告
2.支部代議員の役割について
3.2022年度 支部活動計画について
4.2022年度 キャンパス見学会について
日 程 9月24日(土) 新宿キャンパスにて
5.2022年度 支部研修会・支部新年会について
研修会 日 程 11月27日(日) 大宮周辺より東京都内
ご講演 工学部電気電子工学科 教授 前田幹夫先生
新年会 日 程 2023年1月21日(土) 埼玉県内予定
6.そ の 他
【講演会】
工学部機械工学科教授 田中淳弥先生より「内燃機関研究室と自動車用エンジンの異常燃焼に関する研究の紹介
~エンジンの現在(いま)と未来~」と題してご講演いただきました。
田中先生は工学院大学のご出身、旧新宿キャンパスで学んだ経験をお持ちで、新・旧の新宿キャンパスの写真を紹介してくださいました。先生のご研究は内燃機関に関する研究でピストンエンジンを専門とされております。
50年以上前からガソリン自動車は電気自動車に置き換わると言われ続けたが、その度、ガソリン自動車は技術革新を起こして時代のニーズに応えてきた。
内燃機関の良さは「大きく問題となるものがない」「取り扱いが簡単」「安価な材料で製作することができる」「環境適合性がある」「出力の調整が容易」「液体燃料を直接利用できる」「利益を出しやすい」以上の利点から消費者に好まれている。ピストンエンジンで重要なのは「熱効率」と「排ガス」。自動車用内燃機関にはガスコンロのように燃料と空気をよく混ぜて燃やすガソリンエンジンと、蝋燭のように燃料を蒸発させながら燃やすディーゼルエンジンとがある。前者のガソリンエンジンは、排ガス処理は比較的容易だが大出力が苦手。後者のディーゼルエンジンは煤(すす)を出すが大きな出力が得意。双方に利点がありガソリンエンジンは小型車に、ディーゼルエンジンは大型車に利用するのに適している。電気自動車はそのような大きな力を起こすには膨大な電力が必要となり、内燃機関車のように一度の燃料補給で距離を伸ばすことも現状では困難である。ガソリンエンジンの弱点はノッキングである。現在の車はノッキングを起こさないよう自動的に火花と飛ばす時期を調整するプログラムがあるが、しかしその弱点として燃費が下がってしまう。
更に、最近ではスーパーノックというエンジンを壊してしまうノッキングがあり、その原因は二つの条件で起こりやすい。一つはエンジンに空気を送り込むポンプがついている (ターボチャージャーなど)。もう一つは直接燃料をシリンダーに噴射する方式であること、このスーパーノックが起こるとエンジンはすぐに壊れてしまう。突然起こり、突然消えるメカニズムも解明されていない。
田中先生は、低速回転時にLSPI (低速過早着火)を原因とするスーパーノックが起こりやすく,またこれが起こるとエンジンオイルが大量消費していることに着目し、仮説を立てて工学的に実証する研究を学生たちと共にされています。
ゴミ袋をかぶりながらオイルまみれになってシリンダー内のオイル溜りの撮影をされた際のお話はとても興味深く、撮影されたオイル溜まりの映像は悪い現象であるにも関わらずとても美しく感じました。
その条件を再現し、数式に落とすことによって異常燃焼を起こさない燃費の良いエンジンが開発されるのではないかと期待されます。実現すればエンジンの熱効率が火力発電所の熱効率を超える日も夢ではないかもしれません。
先生は「機械工学は人の能力を補助、助長して人々の暮らしに役立つものを作り出すこと」とおっしゃっていました。卒業生たちは企業に入ってひとつの壁にぶち当たるそうです。良いものを作るだけではなく、性能が良くてさらに消費者に認められ、売れる物を作り出す難しさです。その時に必要なのは「いいものを作るには勉強も大切だが、人としての幅を広げることも大切。自分が楽しいことや物を知ることが大切だ」とおっしゃっていました。
講演を終えての質疑応答では、エンジン好きの参加者から大変活発な質問がありました。「ヨーロッパの車は(小型車でも)ガソリンエンジンではなくディーゼルエンジンが多いのはなぜか」「水素燃料の未来は?」「LPガス燃料はなぜ普及しないのか」「家庭用廃油からジェット燃料への流れは今後どうなるのか」など、エンジンにまつわるものはもちろん「研究室の定員はどのぐらいなのか」「就職活動について研究室ではどのようにしているのか」など、保護者が気になる質問にも丁寧にお答えいただきました。田中先生に感謝いたします。
コロナ禍での生活も3年目となりWithコロナの新生活も身について、対面での講演会も開催できるようになりました。懇親会こそできませんでしたが、講演後も田中先生を囲みご父母の悩みなど、ざっくばらんに相談させていただきました。参加された代議員の皆様も、工学院大学ならではの先生と保護者の近さを実感できたのではないでしょうか。
これからも後援会の活動へ積極的に参加いただけると嬉しく思います。
記:副支部長 関口浩美