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2022年03月22日
本年度の千葉支部講演会は今年度より副学長に就任された情報学部 情報デザイン学科教授の蒲池みゆき先生を講師としてお招きし、コロナ感染者数減少の状況を踏まえ、対面とリモートの併用での同時開催となりました。
2021年12月4日(土)、会場となった千葉市文化センターの会議室には、後援会本部 福井会長、東京支部 山田支部長、神奈川支部 涛崎(とざき)支部長、佐山理事を含め、千葉支部会員23名にお集まりいただき、新潟支部、中京支部、長野支部、南東北支部の方々にはリモートでご参加いただきました。
司会進行役 渡部会計の開会の挨拶、市川千葉支部長および福井会長の挨拶の後、『化粧品開発に関わる認知情報学 ~顔に現れる年齢情報~』の演題で蒲池先生の講演が始まりました。
はじめに、九州大学では文学部哲学科・心理学を専攻され、顔の画像データベースを使った表情認識について研究を続けてこられた蒲池先生が、(株)国際電気通信基礎技術研究所 専任研究員を経て、工学院大学に至るまでのお話をお話いただきました。
蒲池先生の研究室の名前である「認知情報学」とは先生が考えられた造語だそうです。
研究員でいらっしゃった頃は、心理学だけでなく、医学・工学・電気系など多方面の分野の方々が集まり、日々研究を続け、論文を多数発表。当時は顔に関する研究が活発に行われており、基礎研究のピークだったそうです。研究を続ける中で専攻されていた心理学のアプローチだけでなく、いろいろな分野と組み合わせた方が研究は楽しいと気づき、人物同定、顔の認証、属性(性別や年齢など)の自動振り分け・顔の合成のシステム作りに携わり、医学系の研究や他のシステムの評価なども行ってこられました。
工学院大学に着任当初は、人間のことを情報とどう繋げるのか学内でイメージが湧かなかったそうですが、今やそんな空気は感じることはなくなり、人が感じていることを正しく計測することは必要だということが浸透し、この15年でだいぶ認識が変わってきたそうです。
続いて共同研究のお話を伺いました。
顔認識の研究では、年齢・性別識別を行うための基本的な部分を共同研究していらっしゃいます。この顔認識はレジシステムでの年齢・性別確認や、自動改札など私たちに身近なものに導入されています。
また、肌のケア製品の共同研究では、肌の動きのタイムラグで老化印象の原因を解明されたお話を伺いました。
この二つ以外でも医薬品会社や警備会社、人材派遣会社など多岐にわたって共同研究の依頼を受けていらっしゃるそうです。
顔認識のお話では、人は0.5秒以内で性別・年齢層・職業など、短時間で平行して複数の顔を識別する能力があり、人の顔認識を機械に応用しようとすると顔の検出(顔の位置の特定)、属性識別、顔認証・個体識別、表情識別などたくさんのことを処理しなくてはならず、世の中の顔認証システムはどれかに特化したものがほとんどとのこと。AIを活用することである程度の識別はできますが、人のように複数同時に識別できる機械はいまだにないというお話に、人の顔識別の素晴らしさを実感しました。
人の表情の違いを識別するためには、画像上のどのような情報を使用すればよいかという蒲池先生の論文は、3,000以上の論文に引用されており、先生が顔認証システムに広く貢献されていることが伺えました。
顔の老化を予防するには、顔の筋肉を鍛えるのではなくマッサージと保湿が良く、左右の顔の運動がずれていくと年齢が高く見えるので、顔の左右が均等に見えるようにお化粧で工夫すると若々しく見えるというお話や、顔全体的に適度な光沢感(つや)があると好印象を与えるなど、普段の生活に役立つお話も伺えました。
続いて事前に寄せられた、男性化粧品や加齢に対するケアのおすすめ、卒業生の就職先、他の学部学科とのコラボについて、コロナ禍における大学の授業や研究の状況についてなどの質問に対してもたくさんお答えいただきました。
「蒲池先生がこの道に進む際、両親から後押しはあったか」という質問については、先生の具体的な経験談をお話くださり、「情報がたくさん氾濫している中、子どもが何をやりたいのか決め悩んでいる場合、親が何か後押しできることはあるか」という質問には、「親の経験談はテレビや雑誌からの情報より心に響くと思うので、アドバイスはいくらでもして良いが、子どもの価値観を否定することだけはしないように」など、子どもとの関わり方について貴重なご意見を伺えました。
最後に鵜澤顧問から締めの挨拶があり、会場での参加者、リモートでの参加者合同で記念撮影を行い、講演会は終了となりました。
講演会終了後、会場では美味しいケーキと飲み物を楽しみながら、先生との懇談会を行いました。参加者からは子どもに関する質問が多くありましたが、先生の経験談を交えて親身になってお答えいただきました。
蒲池先生の講演は具体例を交えてとても分かりやすく、認知情報学が様々な分野に関わっているという大変興味深いお話を伺うことができました。
今回、対面開催とリモート開催の併用により、他支部の方にも気軽にご参加いただき、大変有意義な支部講演会になりました。
(記:千葉支部会計 福澤 紀子)