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2014年02月09日
関東地方も寒波に包まれた12月14日(土)に、工学院大学新宿校舎28階第1会議室で、神奈川支部の『文化講演会』を開催いたしました。
講師に工学院大学グローバルエンジニアリング学部機械創造工学科教授の塩見誠規先生をお迎えし、『生活の中の材料と加工』という演目でご講演いただきました。塩見先生のご専門は機械工学とかねがね伺っておりましたが、ご講演を通して、先生のご研究が材料加工(特に塑性加工)、固体力学などに及ぶことを知り、先生の幅広い研究フィールドにとても驚きました。今回のご講演では、身の回りの日用品から工業製品までの様々な素材について、素材自身の作り方から、その素材を用いた製品の加工法などについて、分り易くご紹介いただきました。
ご講演は、非常に身近な飲料用の缶である3ピース缶と2ピース缶の構造の違いから始まりました。まず、3ピース缶は、上の蓋・胴・下の蓋の3つのパーツから成り、缶胴に継ぎ目があり、2ピース缶は、上の蓋・胴の2つのパーツから成り、缶胴に継ぎ目がないので途切れないデザインができるというお話を伺いました。そして、2ピース缶は「深絞り成形」という製造法によって、初めはアルミニウムで作られていましたが、加工技術の進歩によりスチールでも作られるようになったとのことでした。飲料水メーカーからすれば、缶の中味やデザインも大事ですが、缶が軽いと運送量を増やせるので、輸送費をコストダウンできるというメリットがあるとのことです。これとは別に、飲み残しを持ち運べるキャップ式アルミ缶(基本的には2ピース缶)のように、入れ物自体に付加価値をつけた物なども存在し、経済的な要素を考慮したもの以外に、色々な缶が出回っているということでした。
次に、アルミニウムについてのお話を伺いました。アルミニウムは、私たちの生活の中で、缶だけでなく台所用品、1円玉、電車や飛行機の部品にも使われている馴染み深い存在です。アルミニウムの製品素材は、原料となるボーキサイトから作られる「新地金(しんじがね)」、もしくはスクラップアルミからリサイクルされる「二次地金(再生地金)」を加工して得られるとのことでした。また、前者の「新地金」を作るには多くの電力が必要となるので、日本ではほとんど作られず、オーストラリアやロシアなどからの海外輸入に殆ど頼っている状態とのことでしたが、後者の「再生地金」は不純物を取り除くだけで生成できるので、少ない電力しか必要とせず、日本でも生産しているとのことでした。以上のように、アルミニウムを巡る地理や経済に関する話題まで展開され、講演内容を一つ一つ興味深く拝聴させていただきました。
さらに、ご講演では、日常生活で馴染みがあるプラスチック容器の加工法についても、ご紹介いただきました。例えば、飲料用ペットボトルは押出成形という加工法で製造されているとのことでした。また、油や洗剤の容器はブロー成形、お弁当容器は射出成形というように、収納物や用途などによって成形方法が異なるとのことでした。
上記以外に、青銅などの銅加工の歴史、焼き物やガラスなどのセラミックスの話など、多種多様な素材について多元的なお話を伺うことができ、素材加工技術が色々な要因を考慮して発展してきたことに何となく思いを馳せながら、有意義な時間を過ごすことができました。
この講演会の終了後、新宿校舎中層棟8階のファカルティクラブで懇親会を開催しました。この懇親会には、塩見先生の他、工学部機械工学科教授の立野昌義先生、後援会の波多野剛会長にもご参加いただき、予定時間を超える楽しい一時となりました。
最後になりますが、年末のお忙しい中、今回のご講演を快くお引き受けいただいた塩見先生に改めて厚く御礼申し上げると共に、ご出席いただきました支部会員の皆様方にも感謝申し上げます。今後とも、後援会の活動に皆様方の暖かいご支援・ご協力を賜りますようお願いいたします。