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2017年10月19日
神奈川支部文化見学会報告 「八王子新2号館の建築設備」(建築学部まちづくり学科 横山計三教授)
9月23日(土)午後、八王子キャンパス新2号館にて神奈川支部主催の文化見学会が開催されました。
朝方まで荒天でしたが、開催中には日が差し込むまずまずの天気で、ご家族(含在校生)での参加を含む会員54名と首都圏支部間交流でご参加頂いた埼玉支部3名の皆様の参加で行われました。
八王子キャンパス新2号館は、本年4月にオープン、建設にあたり多くの工夫を取り入れており、学生たちに快適な勉学環境を提供しています。最新の建物において、子どもたちがどんな環境で学んでいるのかを知る機会として、企画・実施されました。
ご講演とご案内をお願いしたのは、前年度後援会幹事長を務められ、私たちにとっても馴染み深い、建築学部まちづくり学科教授横山計三先生です。
「八王子新2号館の建築設備」の演題で同建物の講義室でご講演いただき、続いて同館内および建築設備を先生のご案内のもと見学しました。
- 講演 -
横山先生は、民間企業時代や大学院生の頃、つくば科学博物館熱帯雨林温室や新山王ホテル、キッコーマン本社ビル、シンガポールホリデーインホテル、半導体関連工場などの建築に関わっておられたとのこと。自己紹介を兼ねてご自身が設計に関与した数々の作品をご紹介いただきました。
建築学部における講義で、学生には「自分が設計した建築物が目に見える形で残り、Google Earth(写真)に載る。これが建築の仕事の醍醐味である」と説いているとのお言葉が印象的でした。
民間企業時代にシステム開発にも携わり、実務面での豊富なご経験も背景に、建築と建築設備の関係について図を用いながらわかりやすく解説いただきました。
また、工学院大学建築学部の学科では何を学んでいるのか、3学科各4コースについて、建物を創る際の多くの工程の中で、どの部分に主に関与しているかという観点でご説明いただきました。工学院大学の建築学部のコース、カリキュラムは大変充実しているとのことでした。
続いてすまいの建築設備とビルの建築設備(電力、空調、給排水、熱供給)の役割・機能等について新2号館の最新設備の特徴も含め、わかりやすくお話し頂きました。
新2号館のコンセプトや特徴については、「外装デザイン」、「防災拠点」、「省エネルギー、環境配慮」、「キャンパスランドスケープ」の4つの観点からご説明いただきました。
① 外装デザイン:水平ラインを強調したバルコニーのコンセプトの説明は他に任せるとして、一番目を引く高層部のルーバー(※1)状のアルミキャストパネルについて、開口は電子回路の幾何学模様で理工系大学の象徴であり、ランダムな配置で学生の多様性・個の集合体を表しているとの説明がありました。
その後の見学において、裏側(部屋側)に寄付者(個人または団体)のネームプレートが貼ってあることを知りました。後援会のプレートもあります。
(※1ルーバー)日照・風の調整や目隠しを目的とした調節可能な開口のある外装材
② 防災拠点:我が国においては、近年大きな震災を経験し、「建物の耐震性」は基準が厳しくなったのはもちろんのこと、多くの人々も感心を寄せる話題となっています。工学院大学八王子キャンパス新2号館は、キャンパスでの災害時防災拠点となるため、免震部材(積層ゴム)を使用した基礎免震構造(※2)とし、地上部は鉄筋コンクリート、鉄骨造のハイブリッド構造を採用しています。これにより地震時の上層階の揺れを軽減すると共に大空間を創り出しています。
(※2免震)ゴムダンパーの上に建物を乗せることにより、上層に揺れが伝わらないようにする。なお、耐震は建物の剛性を高め、揺れにくくする。制震は油圧ダンパーなどにより揺れと反対方向の動きを作り出し、揺れを小さくする、建築物の地震対策。
また、電力についてはガスエンジン駆動自家発電装置を備え、商用電力が停電しても新2号館全体の電力をまかなえるだけの容量は確保しているとのこと、さらに水道については建物北側に井戸を備え、常時はキャンパス全体として市水と井戸水の併用、断水の場合には2号館は全て井戸水利用に切り替え、飲料水、トイレ用水などの確保はできるようになっています。
③ 省エネルギー、環境配慮:前記ガス発電機はガスコジェネレーションシステムを導入し、電力供給と排熱回収利用による冷暖房同時利用をすると共に、高効率機器との組み合わせで省エネルギーを図っています。また、4階図書館には「誘引エアビームによる空調システム」を採用、誘引、放射、整流効果により、静かに学習が行える、風を感じさせない快適な空間を作り出しています。また、春季・秋季において煙突効果による多層階自然換気(※3)もできる構造となっています。
(※3自然換気)発生する熱気による上昇気流を吹抜け経由で、最上部の換気口から外部へ排出することで無動力の換気を行うしくみ。
④ キャンパスランドスケープ:新2号館と既存建物に囲まれた空間に芝生広場を設け、既存樹木を活かし、根本に木製デッキとテーブルチェアを配し憩の空間を作り出しています
また、施工した株式会社フジタの社長と現場代理人は工学院大学出身とのこと。さらに、インテリアデザインに飯島先生と塩見先生、ランドスケープデザインに下田先生、設備設計監修に横山先生が参画、工学院大学の底力を感じました。
- 見学会 -
続いて見学会に移りました。最初に7階(屋上)の機械設備を見て、順次下層階に下り最後は中庭という順番で、普段は入ることのできない所も含めて見学する、貴重な機会となりました。
【7階 機械室】
受変電盤:「家庭ではブレーカーに相当」との説明に何となく納得するも、その大きさにはびっくり。
非常用発電機(ガスエンジン・コジェネレーションシステム):発電機は防音ボックスに収められているため、直方体鉄製の大きな箱にしか見えないが、銘板から発電機容量は370kWであることを確認。冷却水配管に挿入されたプレート式熱交換器で熱を回収している。
吸収式冷凍機:排熱利用の冷凍機。これも箱にしか見えない。
ガス冷凍機(室外機):それぞれの階に相当する室外機が並ぶ。
採光窓(自然換気排気口):横から室内の吹抜けが見える。昼間の照明用電力を削減すると共に、窓を開けることで排気口としている。
【4階 図書館】
図書館であるが、ラーニングコモンズの一角として、普通の図書館とは少し趣の異なる作りであり、様々な工夫が採用されている。天井板を設けず、ダクトや給排水管など建築設備が全て見え、本来隠れて見えない部分は黒色で統一されている。天井部材が不要になる分、建設費が安くなるのではと思ったが、横山先生談「見せるための配管レイアウト、仕上げをするのでかえって高くつく」とのこと。
建設工事中伐採せざるを得なかった、中庭にあった木からとった板を使ったベンチを始め、様々な材質の形の変わった椅子がたくさんあった。中でも人気が高かったのは、天井からチェーンで吊るされた輪っかの椅子。スイベルジョイントで回転可能となっている。座った感じを変化させることで、アイデア創出、思考にふける、気分転換・・さまざまなことを狙っているように思えた。
さらに、6人程度の小さなミーティングルームがたくさんあり、グループワークもできるように工夫されている。情報端末個室もあり、周囲に邪魔されず集中できる環境となっている。
【3階 学習支援センター】
比較的大きな部屋と共に2人用個室もあり、様々な使い方ができるよう工夫されている。
天井の一角をあえて仕上げをせず、コンクリート打ち放しを見せるようになっている。
【2階 インフォメーションフロア】
プレゼンテーションエリア、インフォメーションフロアであるが、様々な利用形態を想定しているようである。ステンレス板材を意図的にでこぼこに貼った天井は、あまり見たことがなく(初めて見たと表現した方が適切か)、設計者の野心的な遊び心が垣間見えるようであった。
また、柱に蝶番で設置されたステンレスボードを広げることで、機材を用意することなく研究発表会等のポスターセッションが開催できるようになっているとのこと。
【1階 ファブリケーションラボフロア】
シアターには、音響機器が立体的に配置され、様々な実験ができるようになっているとのこと。
VR室(※4)には、細心のVR機器が配され、ここも様々な実験ができるようになっている。
(※4)Virtual Reality 仮想空間。三次元的に映像を映し出し、部屋に仮想空間を創り出しそこにいる人があたかも別の空間にいるかのような状況を創り出す。
中央監視室は土足厳禁のため、監視盤を扉から見学した。
【外部】
井戸と給水設備。井戸ポンプ、貯水槽、塩素注入装置から成る。常時キャンパス全体へ給水、非常時には新2号館給水に切り替えるとのこと。
中庭は芝生広場とデッキから構成されている。元からあった樹木は2本残し、根本はデッキによって取り囲まれている。これは、人による根本の踏みつけ回避効果もあると考えられる。建設工事中に伐採せざるを得なかった2本の樹木があった位置には、若木が植樹してある。この木が元の木より大きくなるまで、その後までもこの場所が勉学の場、憩の場として親しまれ続けますようにと祈り、その場を後にした。
- 懇親会 -
その後、キャンパス内食堂にて懇親会を開催しました。横山先生を囲んで、美味しい料理を頂きながら、会員相互の親睦を深めました。工学院大学学生の父母であるという一つの共通点から、いつものように話がはずみ、楽しいひと時を過ごすことができました。
略儀ながら、御講演頂いた横山先生、サポート頂いた後援会学校関係者の皆様、祝日にもかかわらず料理の用意、後片付けをしていただいた生協食堂の皆様、支部間交流で参加頂いた埼玉支部の皆様、そしてご参加された神奈川支部会員の皆様に、この場を借りて深く感謝申し上げます。
今回参加できなかった皆様も、今後の神奈川支部のイベントには是非ご参加下さい。お子様の通っている大学の様子を知り、先生方や子どもの友だちのご父母と親交を深める絶好の場であり、他では得られない情報交換もできる貴重な機会となっています。
皆様のご参加をお待ちしております。
(記 副支部長 岡 澄代 中村弘志)